二階堂CM制作スタッフの声
二階堂CM制作スタッフの声

二階堂CMの初放送から30年が経った、2017年12月のこと。
二階堂CMを制作されている皆様に、インタビューする機会をいただきました。
毎年私たちにノスタルジアと感動を届けてくれる、二階堂CMの秘密に迫りました!!

 Mさん      Yさん      Sさん(演出家)
テーブル
   Sさん(代理店社員)   かっちゃん
Mさん:CM全体の品質管理をご担当
Yさん:CMのベース作り、とくにナレーションをご担当
Sさん(演出家):企画から映像にしていく一連の流れをご担当
Sさん(代理店社員):07年「文字のかけら」篇よりCM制作をご担当
かっちゃん:インタビュアー

(とき:2017年12月X日   ところ:福岡市中央区の広告代理店打ち合わせルーム)

(略称は下記のとおりです)
制一同:Mさん、Yさん、Sさん(演出家)、Sさん(代理店社員)の4名
一同:制一同にかっちゃんも含めた全員

【0】インタビュー開始
【1】CMの制作過程について
【2】CMをとりまく近況
【3】個々のCM裏話について
【4】みなさんの、最高傑作は??
【5】エピローグ


【0】インタビュー開始

かっちゃん  まずは、このような貴重な機会をいただきましたこと、心よりお礼申し上げます。
00年「風の海峡」篇を初めて観たとき、胸がキューッと熱くなって痛くなって、ぐしゃぐしゃに泣いたのが出会いでした。
出会いをきっかけに、それ以前に制作されたCMも観続けました。特に好きなのは94年「風の棲む町」篇、もう涙が止まらなくて。
...ということで、思い切ってファンクラブなんて作ってしまいました。(笑)

制一同   いつもCMを応援してくださって、ありがとうございます。ようこそおいでくださいました。
おかげさまで30年。ファンクラブの会員も140人を超えたとのこと、嬉しい限りです。CMのファンクラブなんてなかなかないよね。(笑)

かっちゃん   CMの高いクオリティ、そして、テイストが、長きにわたってほとんど変わらない、すごいことですね。
何なのでしょうね、観たときの心のこの震えは...?! 切なさ。懐かしさ。戻って来ないけれど、いや戻って来ないからこそ美しいものに、思いを馳せ、心打たれる。...実は、未だに端的な説明ができないままです。
二階堂CMのおかげで、何と言うか、心のひだが増えたように思います。

制一同   確かに「長い」「不変」はあるかもね。媚びることなく、こだわりをもって続けてきたつもりです。
それが、これだけファンに愛されるようになるとは、嬉しいものです。

かっちゃん   こちらこそ、素晴らしいCMに出会えて、本当に嬉しいです。改めて、お礼申し上げます。
それでは、恐れながら、インタビューを始めさせていただきます。




【1】CMの制作過程について

かっちゃん   ではまず、CMがどのような過程で制作されているか、よかったら簡単にご教授いただきたく。

制一同   87年「自然」篇より、30年間ずっと、制作の基本フローは変わっていません。
Mさん・Yさん・Sさん(演出家)と、広告代理店の制作担当者(2007年からSさん)が中心となって、制作しています。
毎年、GW明けくらいから制作スタート。初めは制作陣で1週間に1回程度呑みに行って(笑)、そこで雑談しながら構想を練ります。
10案くらい考えてから、クライアントに3案くらい提案して、最終的に1つに絞ります。何かをテーマにする、ということが結構ありますね。例えば、煙がテーマという案もありました。蒸気機関車の煙、工場の煙、などなど。
そうそう、京都でロケをやろうという案もあったが没になりました。
まずは、こういう絵コンテから始まるんです。

かっちゃん   おお、きれい、鮮やか!! 映像が、ナレーションつきで絵コンテで描かれているんですね。

制一同   こうやってイメージを作りはするものの、最終的なCMとではかなり違いがあります。
これほど設計図通りにならないCMも珍しいかも。普通は、設計図通りに作るものだし、作らないと怒られちゃいますよね。

かっちゃん   試行錯誤の繰り返しなんですね。

制一同   YES、10月初旬の締め切り日ぎりぎりまでナレーション作り直したり、ね。(笑)
仮編集をSさん(演出家)が中心となって行います。一旦ねかせてから、本編集。
「これで正解」というものがない世界、それでも納得いくまでやる。

Yさん   最初は、大分の自然を強調していました。87年「自然」篇ね。
長く作り続けるとともに、徐々に、日本人の中の心象風景とは何なのか、を追い求めるのがテーマになっていったのかもね。

かっちゃん   二階堂酒造さんのご意見も取り入れて制作したり?

制一同   それがですね、原則として、我々制作者サイドが主体となって提案させていただく、というスタンスなんです。

かっちゃん   驚き!! 普通、CM制作というと、企業さんから代理店さんに、いろいろとこうして欲しいなどリクエストして作るのかと思っていました。

制一同   そう、多分、それが本来のCM制作というものです。(笑) 商品を大きく写すとか、値段を明示するとか、いろいろなリクエストがあるのが当然なのですが、この二階堂CMは原則としてそのようなリクエストをいただかずに作っています。
あ、そういえば、一度だけ、「女々しいものを」というリクエストをいただいたこともありました。
女々しいとは何でしょうね。きれいごとじゃだめ、という意味でしょうか。(笑)
そうしてできたのは1997年「木登り」篇でした。そのとおりということなのか、女性が主人公です。

Sさん(演出家)   何でしょうね、女々しいって。92年「私の道」篇、あの赤と黒の傘。もしかするとああいうのが「女々しい」「忘れられない」ということなのかもしれませんね。(笑)

一同   (笑)

制一同   そんなこんなで、総じて、自由にやらせてもらっています。それゆえ、時代に媚びず、やりたいことをやれるし、他の焼酎メーカーさんがやっていないことも、あえてやることができる。それが、ある意味、強みと思っております。
「媚びないゆえ、古びない」のかもしれませんね。
音楽も、ライブラリ音源から選んでいますが、あえて、CMにはなかなか使われそうにない曲を選んでいます。
毎年、変化をつけて選んでいます。最近では、マリオネットさんを採用し続けていましたが、またライブラリからの選曲に戻しました。

Yさん   そうそう、「媚びない」といったけど、それが、タレントさん(既に有名な人)を使いたくない、にも繋がっています。

かっちゃん   じゃあ、あの帽子とコートの男性も、タレントさんではないと?

制一同   帽子とコートの男ですが、実は様々なスタッフが演じています。Sさん(代理店社員)も、Sさん(演出家)も、ね。96年「シネマグラス」篇くらいから、ある意味このCMの「主人公」として定着してきましたね。

かっちゃん   みんなで!! またまた驚きました。(笑)

制一同   主人公の顔がはっきり写るのもあまり好まないのだけど、例外は、15年「孤独の風」篇ですね。画家さんの顔がはっきり写る。90歳(当時)の、実在の画家さんです。
顔に限らず、あえてはっきりさせないというか、「視聴者に委ねる、何があったのだろうと想像してもらう」ことを、重視しています。
例えば、00年「風の海峡」篇、男女に何があったのだろう。制作している私たちにも本当に何があったかの答えは持っていません(笑)。

かっちゃん   おお、「風の海峡」篇...大好きです!! 手すりで、女性の手が寄り添うところ、何度観ても美しいです。

制一同   そういえば、14年「夢で逢いましょう」篇、冒頭の、視線が合うシーン。「このCMにしては」、かなり大胆な演出といえますね。でも、やっぱり、ストーリーが明確にわかるわけではない。

かっちゃん   謎めいているといえば、ナレーションもそうで、何があったのかなと思わせる言葉が常に鏤められていますね。

制一同   ナレーション作成を外部にお願いしたこともあったのだが、結局自分たちの手で書き直しました。
91年「森のオルガン」篇から、ずっと、自分たちでナレーションを書いています。
総じて、昔ながらのCMの作り方だと思います。手作り感がある、というか。
なお、昔と今とで異なる点もあって、約10年前までフィルムで撮っていました。あのころは大変だった。(笑) 今のように、その場での確認ができない。 今はデジタルになって、そのあたりは少し楽になったかもね。




【2】CMをとりまく近況

制一同   それにしても、これだけたくさんのファンが応援してくれて、本当に嬉しい限りです。

かっちゃん   DVD化などを望むファンも多いようなのですが...恐れながら、実現性についてはいかがでしょうか?

制一同   残念ながら、モデルの契約料などの事情から、難しいと思います。DVD化に関する問い合わせは多いと聞きますが、どうかご了承いただきたい。
あと、よくある問い合わせは、詳しいロケ地の問い合わせですね。
二階堂酒造さんのサイトにおおよそは載っているが、それに載っていないロケ地へも、 独自に調べて行くファンもいるようです、すごいですね。

かっちゃん   Google Map の力が大きいかもしれませんね。ロケ地選びについては、やはり九州中心でこれからも行くのでしょうか?

制一同   ロケ地は、やはり九州で行くでしょうね。遠出してもせいぜい山口県や五島列島かな。なお、鹿児島は芋焼酎の本拠地なので踏み込まないでいます。(笑)
先ほど申し上げた通り、京都でという案もあったもののあえなく没になりました。

かっちゃん   毎年、どんなロケ地でどんな景色、建造物、乗り物などが出てくるのか、楽しみにしていますし、驚かされます。
02年「父」篇、あれは恥ずかしながら存じ上げず、初めて観たとき「おお、こんな建物があるんだ」と驚いたのを覚えています。

制一同   ロケ地選定については、我々自身楽しんでいる側面もあります。何と言ってもSさん(演出家)が、カメラ片手に、年中無休でロケハンしているのですから。(笑)
一方、CMに登場する人物について、少し心配なことがあります。

かっちゃん   と、おっしゃいますと?

制一同   実は最近、業界の自主規制として、焼酎のCMに子供を出演させるべきでないという風潮になっておりまして、今では子供を出していないんです。気づいたかたもいらっしゃるかもしれませんが...。

かっちゃん   そういえば、そうですね。最近見かけない。

制一同   焼酎など、アルコールのCMに出演できる人物は、25歳以上、とルール化されてしまったんです。昔は普通に出ていたのにね。子供は勿論、01年「雨宿り」篇のセーラー服の女学生とかもね。

かっちゃん   子供にアルコール摂取を推奨しているわけでもないのに...。残念です。

制一同   表現の幅が狭まってしまうよね。懐かしさを醸成するためには、少年を出したいのに、それができないとなるとなかなか厳しい。
16年版「還っていく夢」篇では、少年が出せないということで、人形ならいいだろうと、採用したんです。

かっちゃん   そんな経緯があったとは知らなかったです...。

制一同   DVD化が難しいというのは、昔のCMの映像には子供が映っているから、というのもあるんですよ。
あと、もうひとつ制約があって、焼酎のCMは昼の時間帯に流せないんです。
商品の明示されないCMなら流せるので、スポーツ中継の多い昼の時間帯をターゲットに、商品の出ないversionを作った。16年「還っていく夢」篇ですね。
たばこのCMが消えてしまったように、アルコールのCMも、なんてことにならないとよいですが...。

かっちゃん   それは絶対いやだ〜!(汗) ほんと。




【3】個々のCM裏話について

かっちゃん   では、話題を変えまして、個々のCMについて、裏話というか、制作秘話、小ネタなどありましたら、是非お聞かせいただきたく。

Sさん(演出家)   OKです。ではまず、お好きだという94年「風の棲む街」篇からいってみましょうか。あれは、「見えないものを撮ろう」という狙いがあります。紙飛行機を飛ばしたり、湯気を撮ったり、ね。

Yさん   CanonのCMで、「風を撮りに行く」というコンセプトのものがありましたね、あれはいいね。「風の棲む町」篇に通じるものがあるかもしれません。

かっちゃん   なるほど、確かに風は実体があるわけではない...。

制一同   96年「シネマグラス」篇は、映画館を探すのが本当に大変でしたね。当時はネットもないし。
97年「木登り」篇は、女性が主人公という異色作で、女性うけはどうだったかというとかなりよかったらしいね。

かっちゃん   98年「刻の迷路」篇、何げなく視界に入る本が石川達三の「青春の蹉跌」なんですよね。

Sさん(演出家)   私が仕掛人です。(笑) あと、本を開いたときにみえる映画の半券もね。

かっちゃん   そんなこだわりに、頭が下がりますし、ぐっときます。(笑)

制一同  映像作りという意味では、99年「旅人の車窓」篇、ゆらゆら揺れるシーンは、スタッフが実際に揺らして撮りましたよ(笑)。
あと、01年「雨宿り」篇、実は雨が降っていなくて、その場で穴を掘って水溜りをつくったりもしました。(笑)

かっちゃん  納得いく映像のためには本当にいろいろやるんですね...頭が下がります。

Yさん   00年「風の海峡」篇、「海 わたる。風 わたる。」というせりふ。試行錯誤の末、わたる、の前の「間」を感じさせるようにしたんです。納得いくものが書けたと思っています。
声にだしてみて、よし、これでいこう、と思いました。

制一同   あれは反響が大きかったですね。たくさん手紙がきました。とても達筆な手紙とかもありましたよ。

かっちゃん   実は、私も17年前手紙を書いたその一人です。(笑)

Mさん   そういえば、04年「詩人の島」篇の灯台。当初、灯台は海上保安庁のものであり立ち入りなかなか許可がおりなかったのですが、保安庁の偉い人がCMをご存知だったようで、許可をくださったんです。そのおかげで、思い描いた映像が撮れて、よかったと思っています。
ただし、夜の撮影で灯台近くにテントを設営することについてはさすがに許可がおりなかった、灯台の光のそばに明るい物があってはまずいためです。

かっちゃん   保安庁の偉い人がご存知だった...嬉しいし、ありがたいですね。

制一同  05年「砂丘の図書館」篇は、本を読む人を撮りたいという動機からうまれました。現場でのエピソードですが、出てくるあの本、実はすごく大きくて、積み上げるのがやたら大変でしたね。(笑) なお、詩集「風とらんぷ」はYさんの考案です。

かっちゃん  なるほど、二階堂CMの中でも一、二を争うほどシュールな印象を受けましたが、「風とらんぷ」のみならず、本の大きさも影響していたのかも。(笑)

制一同  14年「夢で逢いましょう」篇。

かっちゃん  待ってました(笑)、私がここ最近の作品では最も好きな篇です。あの男性、若い女性といるとき、すごくつまらなさそうな顔してますよね。(笑)

制一同  あれは、貧乏な漫画家という設定です。一緒にいる若い女性は、同棲という設定。

かっちゃん  何があったのだろう...。答えは、視聴者一人一人の中にある、ですね。(笑)

制一同  15年「孤独の風」篇、実在の90歳の画家さんです。あの家も、なかなかいいでしょう、Sさん(演出家)による選定です。

かっちゃん  例年と少しだけ異なるテイストですね、「孤独の風」篇。こういうのもありだなぁと感じました。

制一同  17年「島影の詩(うた)」篇は、何度も小値賀島へ足を運びました。島民のみなさんが本当にいろいろと協力してくださいました。現場の若い女性スタッフに、ファンクラブができそうになりましたよ。(笑)
最後は、島民のみなさんを対象とした試写会も行いました。
17年はもうひとつ「人生の特別な一瞬」篇もありますね。こちらは、14年「心をつなぐ-春夏および秋冬」篇と同様、いわばスピンオフ作品なので、異なるテイストで作っています。合間合間に登場する、写真を鏤めたカット。あの写真はSさん(演出家)によるものです。




【4】みなさんの、最高傑作は??

かっちゃん  30年分のCM、いろいろな裏話があったのですね。あの30秒間を撮るためにどれだけこだわりを持ってどれだけたくさんの映像を撮られているかと思うと、本当に頭が下がります。そして、すごいです。
最後になりますが、ずばり、質問させていただきます。制作されるかたにとっての最高傑作が何だったか、よろしければご教授いただきたく。

Sさん(演出家)  うーん、いろいろあるけれど、一つ選ぶとしたら、05年「砂丘の図書館」篇でしょうか。あれは、本を読む人を撮りたいという想いがあった。あのように結実してよかったと思っています。あと、10年「空に憧れた日々」篇、三角の船も気に入っています。

Yさん  91年「森のオルガン」が、ナレーションの完成度としては一番ですね。ナレーションだけでなく、映像もよく作り上げられたと思っています。

Mさん  04年「詩人の島」篇の灯台かな。あと、図書館、海峡もいいですね。
個人的な話ですが下関出身でして、海峡には特別な思いがあります。古くから大陸との行き来があったわけで、様々なドラマに思いを馳せますね。

Sさん(代理店社員)  08年「消えた足跡」篇ですね。最初から最後まで担当しました。Sさん(演出家)の、「人が通ったところが自然と道になる」イメージをCMにしよう、という発想にただただ驚きました。他のCMの仕事もしながらの担当でしたが、この二階堂CMは他のCMとは制作過程が全く異なります。「こんなCMの作り方があるんだ」と再認識したのがいい想い出です。問い合わせも多くいただきました。あと、「イエスとノー」から始まるあのナレーションを書くことができた、07年「文字のかけら」篇も、いい想い出です。

かっちゃん  ありがとうございました!!




【5】エピローグ
インタビュー終了ののち、みんなで博多の繁華街に繰り出し、大分むぎ焼酎二階堂で乾杯!! 2次会より、プロダクションのかた2名(うち1名が、小値賀島でファンクラブができかけたという女性スタッフ)も加わって最後は3次会とあいなり、ホテルについたのは夜中の1時。本当にたくさん、CMにまつわるいろいろな話をさせていただきました。(このページに書いているのはほんの一部です。)
制作スタッフの皆様、あらためて、本当にありがとうございました!! またお会いした際は何卒よろしくお願い致します。
二階堂CM、最高!! この、唯一無二のアートに、出会えてよかった!!

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