[はじめに]

音楽の演奏には2種類ある。1人でやる「独奏」(ソロ)と、2人以上でやる「合奏」(アンサンブル)だ。
個人的に、合奏のほうが好きだ。しかしながら、合奏となると、相手方のご協力が必要である。当然のことだ。相手方にも都合があり、いつでもどこでも合奏につきあってくれるわけではない。

そこで、思ったのだ。
気軽に合奏につきあってくれる、人間じゃないけど演奏ができる「相棒」がいたら、楽しいかも、と。
音階のある楽器の演奏は難しそうだけど、音数の少ない打楽器なら何とか演奏できるかも? 打楽器というと...そうだ、4分33秒の再演を試みた際に使おうとした、ウッドブロックなら行けるかも? 実現手段は、モーターやセンサーを組み合わせる必要ありそうなので、レゴブロックがいいんじゃない?

かくして、レゴブロックで、ウッドブロックを演奏してくれる「相棒」を作ることにしたのだった。


ウッドブロックを演奏してくれる「相棒」を、レゴブロックで作ろう


[いきなり完成形]

できたのが、これ。ウッドブロック自動演奏機だ!!(笑)
2本のウッドブロックを、回転し続ける2本のレゴの棒が交互に、カン、コン、カン、コン、と叩くというものだ。


ウッドブロック自動演奏機と周辺機器


ウッドブロック自動演奏機の動いているところ

(動いているところのyoutube版です、ウッドブロックの音が出ますのでご注意ください)


しかしながら、これだけでは、ずっと演奏しっ放しになってしまう。演奏開始・停止・再開・停止...といった切り替えも、演奏には必要となる。
そこで、非接触型センサーを組み合わせ、演奏するor演奏しない を、外から制御可能にした。
センサーの前に手を近づけると、演奏が始まり、もう一回近づけると演奏が止まる。


センサーに手を近づけることで、演奏するorしない を外から切り替える

ウッドブロック自動演奏機は一旦できたが、名前はどうしよう。名前がぜひ欲しいところだ。人間じゃないけど、大切な合奏相手、「相棒」なのだから。
そうだ、響きからとって、カンコンにしよう。相棒、あなたの名前はカンコンだ! (安直だけど(笑))


さあカンコン、一緒に合奏してみよう! どんな曲がいい?


[合奏してみた]

ウッドブロックが活躍する曲というと、ひとつ、思いつくものがある。ルロイ・アンダーソン(1908~1975)作曲の「シンコペイティド・クロック」だ。一度は聴いたことあるかたもいらっしゃるのではなかろうか。
さあカンコン、あなたの出番だ!!☆ いっしょに音楽やろうぜ!!☆ ということで、合奏してみました。
(なお、原曲の一部をカットおよび改変した編曲にしております)


記念すべき、カンコンの合奏デビューだ

演奏してみての感想。
それなりに、格好はついたかなと思う。
ピアノの最初の音が鳴ってすぐ、センサーの前に手をかざすことで、「カン、コン、...」のうち低いほうの音「コン」が始まる。結構、タイミングよく合奏開始できたのではなかろうか。
(逆に言えば、回転機構の状態を、あらかじめその位置にセットしておくことが必要だ。)
そして合奏は続き、00:36秒付近でセンサー前に手をかざして一旦カンコンの演奏はストップ。00:52秒付近で同様に合奏再開。演奏の最後にも、手をかざすことで、同時に合奏終了だ。


センサーの前に手をかざして、タイミング制御。ピアノの蓋に手をぶつけそうでちょっと怖かった

カンコンだが、もちろん、できないことはある。
複雑なリズムは刻めない。音の強弱調整はできない。
あと、音量については、やはりピアノに比べると小さい。
だがそれでも。
お互い合奏を何とか成り立たせて、無事完走できた、まずはそれがよかった
。カンコン、演奏デビューおめでとう、そしてありがとう!!☆
合奏終了後、一緒に演奏してくれたカンコンを讃えました。拍手〜〜〜(ぱちぱちぱち)


合奏後、カンコンを讃える


[演奏旅行に出かけよう]

合奏は実現した。これは終わりじゃなく始まりだ。さらに上を目指そうじゃないか。
お互いの音量を、もう少し合わせたほうがよさそうだね。ピアノ側の音量を少し落とすべく、ピアノ側を何らかの楽器に置き換えるのもよいかも。
ということで、ピアノ側を別の楽器に置き換えのうえ、合奏してみよう。
あと、2回目ということで、何か変化をつけてみよう。そうだ、家を飛び出し、外の世界に出てみよう。演奏旅行だ!
ピアノを何の楽器に置き換えるかって? それは、現地についてからのお楽しみさ。(笑)


カンコンといっしょに、外の世界へGOだ。



持ち運びのために、土台からはずし、部品に過不足無いか確認。



せっかくのお出かけだから、ちょっとおめかししよう。(笑)
ネクタイはどうかな? (手持ちの、ネクタイに一番近い部品がこれかな)



青いネクタイをつけてみました。似合ってるじゃないか



カンコンとともに、電車に乗り、車窓を眺め、歩いていく。
カンコンの色は黄緑が基調なので、緑地をバックにするとちょっとかぶるね。(笑)
あ、たまたま日本茶ペットボトルも緑基調だ...。

それにしても、楽器といっしょに移動するって、なんだかいいものだなぁ。
何を言っているかというと、楽器がピアノの場合、自分の楽器(ピアノ)と一緒にあちこち移動するのは無理ということである。
むかし、市民オーケストラに所属していたことがあった。奏者のみなさんは、みんな、どこに移動するときも楽器と一緒に移動できるのだ。大きな楽器は大きなケースに、小さな楽器は小さなケースに収納し、肌身離さずいつも一緒。ケースにはストラップとかバッジとかがついていたりとか、ね。愛着ってものだ。その点、ピアノ奏者は、つねに手ぶら移動なんだよね...。なんだかちょっと羨ましかった。
(コントラバスとかになると、演奏者自身よりも楽器のほうが大きい世界だが、ご本人は全然苦にしてなさそうだったものだ。)

そんな思い出に浸るうちに、目的地が近づいてきた。


[外で合奏だ]

目的地に到着した。ベンチのうえに、カンコンとウッドブロックとをセットする。
なお、蟻がひっきりなしに来るベンチだったが、特に気にせずセッティングを続ける。


蟻がやたら多い中でのセッティング (これからセンサーを取り付けようというタイミング)

そして、さっき言っていた「外の演奏用の楽器」とは...これ。幼児用のトイピアノだ。持ち運びのこと、および、カンコンに合わせて音量を絞りやすいことから選んだ。
ちなみに、ネクタイをしているカンコンに合わせる形で、自分自身も蝶ネクタイで正装してみた。


自分自身も準備した (トイピアノ + 蝶ネクタイ)

ということで、屋外で合奏してみました!!☆


公園にて、トイピアノといっしょに二度目の合奏をするカンコン

感想。
トイピアノであり音が小さめ(同時に出せる音が2音までというのもある)ゆえ、カンコンとの音量バランスは改善されたように思う。
しかし、風の音が強いね。屋外だとこれがある。最後のほうもずいぶん風の吹く音が入ってしまっている。難しいね...。
なお個人的には、トイピアノの鍵盤が思ったよりもすごく細くて、指の太い私はかなり難儀した。(汗) 幼児の服を大人が無理やり着ようとしているかのようだ!!


演奏後、カンコンといっしょに一礼しました。

[まとめ]

合奏の「相棒」を、レゴブロックで作ってみた。そして、合奏した。
人間じゃないけれど、ほぼ一定の強弱・テンポ・音色の打楽器叩きしかできないけれど、合奏の「相棒」として活躍してくれたのではなかろうか?
演奏するタイミング、しないタイミングの制御を、合図を送ることで実現できた。
演奏旅行を通し、「大切にしている楽器と一緒に移動」という体験ができた。
そして何よりも、合奏を通し、「相棒」と呼べるような思い入れが湧いてきた。
ありがとう、カンコン。あなたと合奏できて、よかった。よい想い出になりました。

そして。

またね、バイバイ。カンコンは一旦分解され、おもちゃ箱に帰って行きます。今度組み立てたときは、また別の曲を合奏しよう!!☆
何度でも分解できる、何度でも組み立てられる、それがレゴのいいところなのである!!(笑)


カンコン、また会う日まで。



ちなみに(その1)。
打楽器演奏の技術って、とてつもなく深遠な世界らしい。元NHK交響楽団の茂木大輔さんが、確か著書で語られていたのだが、「シンバルという楽器は、バチ打ちに3年、合わせに8年、ラフマニノフ(1873~1943)のピアノ協奏曲に70年」だそうである(驚)。カンコンは、年どころか、誕生後まだ数日しか経っていない。さあ、何年かけて人間に追いつけるだろうか?!(笑)
ちなみに(その2)。
ウッドブロックは本来は木のバチで叩くべきものですが、今回はプラスチック(レゴ)で叩いてしまっています。何時間もたたき続けるわけではないのでウッドブロックへの損傷は少ないと思います。どうかご了承ください。
ちなみに(その3)。
カンコン作製にあたり、何が苦労したか?
やはり、回転機構で叩く際の、力の逃(に)がし方だったと思う。カンコンがウッドブロックを叩いてから、力を逃がさないままだと、カンコンとウッドブロックとがお互いに押し合ったまま膠着状態になってしまう。ここは、レゴの棒を車輪に緩く取り付けることで、力を逃がすことに成功した。
下の写真のうち左側が、当初考えていた構造だ。これでは、車輪の2箇所に棒を固定しているため、力を逃がすことができない。そこで、右側のように、車輪の1箇所にだけ棒を固定する、言い換えれば緩く取り付けることで、どうにか力を逃がすことに成功した。


写真左:車輪の2箇所に棒を固定。写真右:車輪の1箇所に棒を固定。

あと、難しかったのは、カンコンとウッドブロックとの位置関係だ。
叩いてから力を逃がす構造になっているとはいえ、近すぎると、叩いたあとにお互い押し合ったまま膠着状態になってしまう。
かといって、遠すぎると当然、空振り三振だ。ちょうどよい精密な位置決めが求められる。
これまでの写真の通り、ウッドブロックを三脚に固定のうえ、実際にカンコンを動かしっぱなしにしてちょうどよい位置を探るという方法をとったのだった。

最後の最後に、制作過程の写真をちょっとだけ掲載します。またカンコンと会う(カンコンを組み立てる)ための記録の意味もこめて。


写真左上がプロトタイプ、これは力を逃がす構造ではないためうまくいかず。
力を逃がす構造にし、滑車・歯車・モーターを取り付け、モーター上部の補強を行い、そして土台をつける。


センサーに手が近づくとモーターを回転させるプログラムだ。
モーターの回転速度は曲のペースを考慮し、最高10のところ8に設定した。

戻る