[はじめに]

だんご三兄弟。1999年ごろ大ヒットした歌だ。今でも歌える人は多いだろう。私も口ずさんだことがある。
一方で、「カラマーゾフの兄弟」という文学作品がある。ちょっと長いけど、私はこの作品がすごく好き。友達に勧めることも多い。


「だんご三兄弟」(作曲:内野真澄・堀江由朗、作詞:佐藤雅彦・内野真澄) と、
「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキー著、原卓也訳)


このカラマーゾフの兄弟、タイトルからはわからないのだが、兄弟は三人。すなわち三兄弟なのだ。
おお、三兄弟という共通点があるではないか! ...ということで、以前から、合体させた「カラマーゾフのだんご三兄弟」があったらどうなるだろうかと、考えたことはあった。

ずっと考えてきたけど、それだけじゃ何も起きない。まずは、作ってみようじゃないか、カラマーゾフのだんご三兄弟を! というのが今回のテーマである。
思ったことを形にしてみることに意味があると信じて、やってみた。

あと、少しでも何かこう、「カラマーゾフの兄弟」ってどんな本だろうとか、読んでみようという気持ちになってくれたらいいな、という気持ちもある。


[いきなり完成形]

できたのが、これだ。カラマーゾフのだんご三兄弟である。


カラマーゾフのだんご三兄弟


カラマーゾフのだんご三兄弟、全景です。(結局3本作った)

歌ってみようか。緑文字部分は、だんご三兄弟の歌詞を意識した内容です。
串にささってカラマーゾフ
三つ並んでカラマーゾフ
しょうゆぬられてカラマーゾフ
→ よーし、食べるときは歌詞のとおり醤油だな。
カラマーゾフ三兄弟♪

兄弟の名前はというと、長男はミーチャ(Митя)、次男はイワン(Иван)、三男はアリョーシャ(Алёша)という。
続けて歌うならこんな感じだろうか。

一番上はミーチャ ミーチャ
一番下はアリョーシャ アリョーシャ
間に挟まれイワン イワン
←「次男」と「イワン」の語感が似ているのが、なんだか面白い!(笑)
カラマーゾフ三兄弟♪

兄弟喧嘩、隙間の空いただんご。三男アリョーシャ以外はずっとしかめ面だから、長男と次男ってむしろ喧嘩状態のほうが常だったりして...。(汗)


隙間の空いただんご

今日は戸棚で昼寝。うっかり寝過ごし朝が来て、硬くなる。


戸棚で昼寝

春になって花見、秋になって月見と行きたかった。しかし、花見のタイミングを待つには、消費期限が短すぎる。
というわけで、一思いにその場でいただくことにしよう。一年通してだんご、というじゃないか、今食べちゃってもいいよね?!(笑)
さあ食べよう。とその前に、ドストエフスキーさんの考えた登場人物たちを食べちゃうことに対して、少し罪悪感が出てきた。
供養というか、ごめんなさいをしなきゃとね。と思って、本の前で一礼した。


食べちゃう前に、本の前で一礼しました。(日本語版の文庫本3冊、および英語版1冊)


それじゃあ、食べよう。(あ、ゴム手袋はめたままだったね)


しょうゆぬられてだんご、のとおり、
カラマーゾフ三兄弟に砂糖醤油のたれをつけました。


食べちゃうと、あっという間です。カラマーゾフのだんご三兄弟、ごちそうさまでした。
今度生まれてくるときも〜 願いは揃って同じ串〜


[制作過程1:兄弟の顔を描く]

カラマーゾフの兄弟をだんごにするとなると、やはり顔を描かなきゃ、だ。どう描くか?

だんご三兄弟の顔は、手描き風のソフトなタッチなので、それに倣い、手描きにしてみよう。
手描きする際は、カラマーゾフの映像化作品も参考にしてみよう。数ある映像化作品の中でも一番原作に近いという、1968年公開のソ連映画「カラマーゾフの兄弟」の写真をみてみると、なるほどたしかにイメージ通りだ! 性格がよく表れている顔と思う! プロフェッショナルの素晴らしい仕事ぶりには驚嘆させられる。
(全編を視聴したかった...。絶版で入手できず)

カラマーゾフ三兄弟の性格を簡単に説明すると...
三兄弟中の位置名前性格どんなところがイメージ通りの顔と思ったか
長男ミーチャいい人ではあるのだが、喧嘩っ早く、金遣いが荒くて、女性に弱い(翻弄されやすい)。いわば損をしやすい性格。両津勘吉(こち亀)を、より女性に翻弄されやすくしたような感じ。鋭い眼光と口髭
次男イワン頭脳明晰だが、ひねくれ者。キリスト教を真っ向から否定する無神論者。「キリストを監禁して、小一時間問い詰める」という、根暗かつ過激な小説を書いている。メガネをかけてむすっとした表情
三男アリョーシャ長男次男とは大違いの、心優しい、穏やかな、天使のような青年。ちなみに主人公。アルカイックスマイルというのでしょうか、柔和な顔

1968年公開のソ連映画「カラマーゾフの兄弟」ジャケットおよび映画ワンシーンより。
三兄弟の性格がよく表れたビジュアルと思う!


三兄弟の性格そして顔のイメージを把握したところで、さあ、顔を手描きにしてみよう。
因みに、性格を歌にするとこんな感じだろうか。

喧嘩っ早いよ ミーチャ ミーチャ
心優しい アリョーシャ アリョーシャ
無神論者の イワン イワン

カラマーゾフ三兄弟♪

だんごに直接描くよりも、薄いシート上に描いてから切り取って貼る方式を選んだ。
なぜかというと、薄いシートに描く際に、トレースをすることができ、表情のばらつきが抑えられそうと考えたためだ。

これが、マスタファイル。紙のうえに、三兄弟のシンプルな似顔絵。ロシア語でそれぞれМитя、Иван、Алёшаと文字も入れてみた。


マスタファイルを手描きで描いた


このマスタファイルのうえに、薄い可食シートを敷いて、上からトレースする。トレースするときのペンは、フードペン(可食インク使用)を用いる。


三兄弟を2セットまでトレースし終わったところ。これから3セットめのトレース開始だ。
(可食シートが手の汗でやられないよう、ゴム手袋は必須である)



結局4セットトレースした、これをひとつひとつはさみで切り抜いて、だんごに貼りやすくしよう。



切り抜いた、あとはだんご上にピンセットで貼ればよい。


さて、だんごの準備をするか。


[制作過程2:だんごを作る]

だんごのほうはというと、特にひねりは無く、一般的な工程である
今回は、三兄弟 x 3セット = 9個のだんごを作ることにした。


上新粉と白玉粉と水を用意し...



こねて...



沸騰したお湯で3分間茹でます。



茹で終わったら、掬い上げて水気を切り、粗熱をとる。



一般的なだんご作りの工程、終了です。


[制作過程3:だんご上に顔と名前を貼る]

さあ、あとひといき。


はさみで切った顔と名前を、順次貼っていく。ゴム手袋着用のうえ、ピンセット使用。
(写真はミーチャの顔ね)



長男ミーチャ。うーん、目鼻口が顔の中心に集まってるね。だんごのほうをもう少し小さくすればよかったかも。
ちなみに、可食シートは剥がれることなくくっついてくれ、色の違いもほとんど目立たない。この点はうまくいったと思っている。



次男イワン。同様。



三男アリョーシャ。これが、目鼻口集中が一番強い印象。地獄のミサワみたいだな...。

そして串にさせば完成。ちなみに、ふと思ったことがあった。
上から順に長男次男三男という並びにするためには、最初に三男から串に刺すことになる。そして、一番最後に串に刺されるのはもちろん長男。
これって、逆説的だね!(笑)
本当の兄弟の順序は真逆なのかもしれない。


3本、完成です。



最後に、名前・実写・似顔絵・だんご、を総括するとこうなります。



[まとめ]

だんご三兄弟の歌と、文学作品カラマーゾフの兄弟とを合体させた、「カラマーゾフのだんご三兄弟」を作ってみた。
そして食べてみた。
形にすることに意味がある、という信念と、カラマーゾフの兄弟を広めたいという気持ちが、そうさせた。
ここまで読んでくださったかた、ありがとうございます。いかがでしょう、ここまで読み進めてくださったということは、カラマーゾフ三兄弟の名前・ビジュアルのイメージ・性格は、インプットされたのではないでしょうか?!
まだカラマーゾフを読んだことないかたは、このとっかかりを機に、いかがでしょう?!...という誘いとともに、擱筆。

そうそう、歌のほう、最後まで歌っておくといたしましょうか:
カラマーゾフ カラマーゾフ カラマーゾフ カラマーゾフ
カラマーゾフ三兄弟 カラマーゾフ三兄弟 カラマーゾフ三兄弟
カラマーゾフ!
(歌うとなるとかなり早口を強いられるね。舌を噛みそうだな(汗))

ここからは、カラマーゾフの兄弟に興味を持ってくださったかた向けの、補足。
(「そんなに勧めるなら、もうちょっと書評を聞かせてほしい」というご意見もあるかもしれないので)

カラマーゾフの兄弟、何がすごいかというと、「人間がなしうる想像力と構成力の限界がある」と思うのです。
推理小説でもあり、裁判小説でもあり、恋愛小説でもあり、「犯罪にかりたてたものは何か」を浮き彫りにする一種の社会派ドラマの性格も持ちます。
さらに、作中作である宗教小説「大審問官」(上記、イワン著の根暗かつ過激な小説ね)の読み応え、鬼気迫るものがある。ごった混ぜのようでいて、それを感じさせないというのが、凄すぎなのです。
気をつけて読まないと見逃すような細かな伏線の、見事なまでの回収。登場人物一人一人が、「それぞれの方向に人間くさい」といいますか、リアリティを失う一歩手前でとどまっている、バランス感覚。驚嘆するばかりです。誰もが、それぞれの幸せを追い求めるあまり、ぶつかり合い、傷つき合ってしまうのですが、救いの手が忘れ去られることは意外に少ないようにも感じます。こんな私が楽観的すぎるのか?!
それにしても、作中でゾシマ長老の言う、「人間ってのは、世界人類を愛せても、隣人を愛せないもの」という言葉は心に突き刺さります。人間がこの性質に少しでも抗うことができれば、世界はわずかずつでも進歩できるのではと思うし、自身がまず実践しなければと思います。

傑作中の傑作ではありますが、最初のほうは意外に展開がゆっくりめで、ここでつまづくかたも多い気がします。私も、最初(に読んだ10代のころ)はそうでした。しかし、ここを乗り越えれば本当にすごい世界が待っています。カラマーゾフ3兄弟の父親を殺した真犯人、あえてここでは述べません。是非とも読んでお楽しみを!!☆

カラマーゾフのだんご三兄弟が、少しでも助けになれば幸いです。

戻る